カルトに対するワクチンでありウイルスである『1Q84』

村上春樹『1Q84』は、オウム真理教事件の被害者たちと信者たちへのインタビューを行った著者が書いた、ひたすらに面白い小説です。

自分の書いた物語より、カルトの語る物語の方が面白かったから、様々な事件が起きたのではないか? そんな、小説とカルトとを対等に考える問題意識が特徴です。

主人公たちが出版する作品内小説『空気さなぎ』は「カルトに対するワクチンであり、ウイルスである」と作中で評されます。また、『1Q84』そのものも、カルトに対するワクチン等になっているという二重構造です。

『1Q84』を読めば、カルトとはどんなものかがよく分かります。まず、教団に対して犯罪が行われても、警察に被害届を出しません。疑惑が起こると、スーツを着たスポークスマンが自分たちの無害性をとうとうと述べます。

最終的には主人公たちの活動で、教団に警察が突入しますが、教団も反撃して『空気さなぎ』を絶版に追い込む……面白いです!