「解体撤去工事(解撤)・撤去費用・取壊費」が経費になる理由

解体費用を経費で落としてよい根拠は?

なんとなく、タイトルの取引金額は固定資産の取得価額ではなく、経費にしている人が多いと思いますが、「なんで?」と聞かれたらどう答えますか?

この処理の根拠は、法人税基本通達7-3-6(土地とともに取得した建物等の取壊費等)です。

土地を利用する目的で建物を取り壊したら、その取壊費用は土地の取得価額に含めるという通達です。

これを反対にすると、「土地を利用する目的で建物を取り壊したのでないなら、その取壊費は土地の取得価額に含めない」。つまり、経費になるということです。

根拠は分かったが、なぜそうなるのか?

法基通7-3-6で、取壊費が取得価額となる(経費にならない)趣旨が分かれば、その反対側が、経費になる理由です。

法基通7-3-6が想定しているケースは、土地を古家ごと買い取ってから、買い手がその古家を解体する取引です。

このように、売り手が古家をあらかじめ解体しておいてくれない場合、解体費用の分、土地の値段を値引いてもらわないと、買い手は買いたいとは思えません。

そこで価格交渉が行われ、古家つき土地の値段は、解体費用の分、安くなっているはずです。

土地売買代金=土地の取得価額-解体費用

この割安な土地売買代金を、本来の土地の取得価額(時価)に戻すために、解体費用を足し戻そうというのが、法基通7-3-6の趣旨です。上の式の右辺の解体費用を、左辺に移項して取得価額を算出するための通達です。

土地売買代金+解体費用=土地の取得価額

結論

法律や通達には、肝心のところが書かれないという性質があります。

この通達でいえば、「当初からその建物等を取り壊して土地を利用する目的であることが明らかであると認められるとき」とは何か。

その一つは、「買い手が負担する建物の解体費用の分、土地の代金が安くなっているとき」です。

その割安な土地売買代金を、取得価額(時価)に戻すために、解体費用を取得価額に含める。

そうでなければ、解体費用は経費になる。

解体費用は資本的支出かという観点で見ても、古家の解体費用をかけたことで、新しく建てる上物の価値が上がるわけではないので、資本的支出とも言えません。

よって、撤去工事等が、法基通7-3-6が前提としている事情(本体が撤去費用分安くなっている等)にあてはまらず、設置費用等(固定資産の付随費用)にも該当しない場合には、原則として経費になると考えられます。