売り手が免税事業者で、買い手が課税事業者を前提とします。
免税事業者は登録して消費税を納めるか、その場合の税込価格をいくらにするかが問題となります。
売り手が2割特例を受けられる場合を想定していますが、これ、3年間の期間限定なので、その後のことも考えておく必要があります。
売り手の立場…登録して価格据置きは損
- 売り手がいちばん有利な結果となるのは、免税事業者のままでいて、かつ、税込価格を据え置くことです(立場の強い売り手が取れる方法)。手取りは変わりません
- 次が、免税事業者のままでいて、税額の2割の値引きを受け入れることです。その値引き分、手取りが減少します
- 実は、インボイスの登録(2割特例)をして、税込価格を据え置くと2.より悪化します。手取りは2.と同じく納税分が減少するのに、消費税の申告の手間・費用が発生するからです
- 登録して消費税を2割特例で納税するなら、1.85%の税込価格の値上げを獲得して、やっと手取りが同じになります。ただ、消費税申告のコストを考慮するとまだマイナスです。登録すれば数%の値上げOKなら(そこが難しいのでしょうが…)、登録すべきです
買い手の立場…税額の20%値引きを得ても損
- 相手が免税なら「税額の2割の値引きを獲得できないと損をする」と言われますが、実際はそれでも損をしています。1,100,000 を 1,080,000 に値引きできても、引ける税額は、1,080,000*10/110*0.8=78,545 なので、費用が 1,455 増えるからです
- かといって、費用が同額になるように、さらなる値引きを要求すると、下請法など別の法律に引っかかってしまいます
- 「費用が 1,455 増えるなら、その分、法人税が安くなるからいいか?」と一瞬思うかもしれませんが、費用が増えても、粗利率が同じなら、売価に転嫁されて収益も増えるので、法人税は安くなりません(東京電力は、個人からの電力買い取りの消費税が引けなくなるので、売価を値上げします)
- 売り手に登録してもらい、税込価格を据置きして、買い手はいままでどおりです。ただ売り手 3. で見たように、売り手のコストはアップするので、売り手の持続可能性を考慮すべきときもあるのでは、と思います
国(税務署)の立場…これまで損していたので今後は得
- 税金を取る方の立場からすると、売り手と買い手がどのような交渉をしようが、インボイス制度開始後は、税収は増えます
- 制度開始前は、買い手は消費税を満額引いているのに、売り手が消費税を納税していなかったので、国が損を被っていたともいえます
- 売り手が免税事業者のまま税込価格を据え置いても、買い手の引ける税額が2割減るので、その分、税収アップです
- 売り手がインボイス登録して価格を据え置いても、売り手が新たに納税するようになった分、税収アップです