「税務に重要性の原則はない」は本当か

インボイスQ&A、すごいですね。消費税法基本通達の改正があったので、基通の番号が、インボイス通達から基通のものに置き換えられています。

国税局の方々のご苦労を推し量ってしまいます。いろんな問い合わせが来て、法律に反しないように回答を作って……。

通達の番号を置き換えているときなんか、「私はこんなことをするために国税庁に入ったんじゃない!」と心の中で叫んでいたんじゃないかと……。

インボイス、罪が深いです。優秀な税務官僚が退職しないか余計な心配をしてしまいます。

インボイスには重要性の原則がありそう

で、「税務に重要性の原則はない」、または「重要性の基準値は存在しない」(by『独立する公認会計士のための税理士実務100の心得』森智幸、中央経済社より)とよく言われますが、ことインボイスに関しては、「ある」と国税庁自らが述べています。

ETCのインボイスは、1社1回だけダウンロードすればよい、というあれですね。

その1回って、もしかして、万一、税務調査で指摘されたら、そのときにダウンロード、という意味で、でも、指摘したのに一瞬で解決されたら、指摘する側の立場というか、説得力が弱まるので、そんなこと指摘しないというか……。

ETC以外で考えてみましょう。

通帳に、「東京電力」の名義で引き落としがあって、それが、電気代でない可能性、または、電気代であったとして、東京電力が登録事業者でない可能性って、それぞれ何%でしょうか……?

もちろん、インボイスの保存は、法定の要件です。保存してくださいね。ですが、こういうのは、後回しでいいんじゃないでしょうか……?

事実認定の問題として、インボイス以外の間接証拠で、登録事業者からの課税仕入れと推定されるものは。

「じゃあそんな法律、なんのためにあるの?」。課税の適正化のため(ケンカになったときの武器にするため)ですね。ケンカする予定、ありますか?

検証可能性があればよい

そもそも、登録番号Txxxx…を検索したとして、出てきた法人名が、インボイスに載ってなくて(屋号、店名)、でも電話番号が書いてあって、電話して、法人名を確認できる可能性があれば、よい、と国税庁が言ってるんですから。

納税者の側も、まずはそのくらいの温度で、インボイス対応を始めてみてはいかがでしょうか。経過措置の6年間のうちに、慣れてスムーズにいくようになるはずです。

いわゆる偽造インボイスについて

ところで、「適格請求書類似書類等の交付の禁止」というルールがあって、いわゆる偽インボイスを発行すると、罰則があります(1年以下の懲役か、50万円以下の罰金)。

記載内容に不備があって、うちのインボイスが偽インボイスとして認定されてしまうんじゃないかとご心配の登録事業者の方。

登録事業者であれば、罰則はありません。

このルール、「適格請求書(インボイス)発行事業者以外の者は…交付…してはならない。」という条文ですから。インボイスを発行できる登録事業者の方が罰せられることはありません。ご安心を。