令和6年度与党税制改正大綱を読んで(インボイス不要と住所問題)

通読しました。個人的に興味深かったものについて触れていきます。

結論としては、「入場券」「自販機」取引であっても、帳簿に住所を書く必要がない、というお話です。

2年前の売上高が5000万円超の事業者など、一般課税の消費税申告をしている方に関係します。

インボイス不要取引 帳簿記載要件の「住所」廃止

インボイス不要→登録番号の確認をしなくていい→誰から仕入れてもいい取引のうち、「入場券」「自動販売機」については、改正前は、摘要欄にその「住所」を入力する必要があったんですよ。

ちなみに、それ以外については、国税庁告示第26号(2023年8月10日付)で、「住所」は入力不要になっていました。

でも実務を行う人の間では、住所の入力は「不可能」と言われており、改正前から「〇〇市まででいいですよ」という案内が出ていました。

法律に書いてあるから、国税庁もそう案内せざるを得なかったのです。

これは、実態に合わせた、良い改正だと評価できます。

昔から「住所」を入力すべきだったが、空文化していた

実は、これはインボイスとは関係なく、昔から「住所を書け」という法律だったのです。

どうしても請求書等がもらえない取引は、「もらえない理由(自販機だから)」と「仕入れ先の住所(自販機所有者の所在地)」を帳簿に書け、となっていました。

これが、インボイス制度になって、「インボイスなしでよい特例を受ける旨」と「仕入れ先の住所」を入力しろ、にリニューアルしたわけです。

インボイス制度が始まるにあたり、消費税法の条文にあらためて注目が集まって、「なんだこの条文は!」「とにかく対応しようぜえ!」と騒ぎになっていました。

会計ソフトを開発する方が「どうやって自販機の住所入力を実装しよう…」と悩んでいたのをネット上で見たことがあります。

しかし、この「住所を書け」に違反して、税務調査で指摘された、という話は聞いたことがありません。

「使われていないのに、ゾンビのように残っていた法律」だったんですね。そんな条文は、削除して正解でした。

当然、税制改正以前から、「住所」の入力は不要です

近日中に削除される条文なので、もう改正前の今日から、住所の入力はしなくてよいのです。

上記の改正の趣旨を踏まえ、令和5年10月1日以後に行われる上記の課税仕入れに係る帳簿への住所等の記載については、運用上、記載がなくとも改めて求めないものとする。

令和6年度税制改正大綱

法律にかかわらず、ずっと以前から、住所の入力は「運用上」必要ありませんでした。

空文化していたから、法律を修正する。空文がずっと残っていると、気になりますもんね。

「この法律、常識的に、変だなあ」と思うことは大切です。

「私は、この法律、イヤ!」は通りませんが、「納税者も税務署も、実行不可能なルールだ」とお考えであれば、そこは後回しにして、限られたリソース、もっと別のことに配分していきませんか。