法人税のかからない非営利団体(社団法人など)を運営していても、職員がいて給与を払っている場合、源泉徴収が必要です。
そのほか、法人格のない任意団体(人格のない社団等)であっても、必要な税務が源泉徴収です。
現物給与の源泉徴収忘れは税務調査の対象
以前、剣道連盟やお寺などで、お給料の源泉徴収をしていないことが税務調査などで問題になったことが報じられました。
事業内容から納税義務がなく、法人税や消費税の申告をしていない団体に対しても、源泉所得税の税務調査というのはありえます。
特に、ある業種で税務調査の成果が上がると、同様の団体に芋づる式に調査が入るということも……。業界の横のつながりで、そういった情報が入ることもあるかもしれません。
永年勤続表彰などで、通常の給与支給と別に、役員・従業員に金品を支給した場合は、特に注意が必要です。
現物給与を意識して「これ源泉徴収必要かな?」という感覚をつかもう
従業員の口座に振り込むものだけがお給料と思っていると、後日、調査で「源泉徴収がもれています」と指摘を受けることがあります。
お金以外にも、モノで払っても源泉徴収が原則として必要です。
昔、不景気な時期に、メーカーの給与現物支給がニュースになったりしましたね。あのように、本当に月給の代わりに自社製品を支給すれば、まだわかりやすいのですが。
給与支給日以外に、例えばお祝い・お年玉といった趣旨で、別に現金や金券・商品券を渡したことはありませんか?
別途渡したものでも、次のようなものは、源泉徴収が必要となります。
- あげたモノは、従業員等がレジャーなど自由に使っていいい
- 金券ショップで簡単に換金できる
- 額面金額がすぐわかる
- モノ・サービスと金券・現金との選択ができる
こういったモノは、現金を渡したのと同じ効果があるからですね。
よく調査で指摘されがちなのが、10年・20年と勤めてくれた従業員に渡す、「永年勤続表彰」のお祝いの品です。
永年勤続表彰を、源泉徴収なしで渡すには
もちろん、永年勤続表彰で、こういった「現金と同等」のモノを渡すときに、源泉徴収しておけばいいんです。
例えば、同じ月の給与の源泉所得税を、金券を渡した分、増やしておくとか(金券の額面を課税支給額に含めて源泉徴収税額を増やし、振込額を減らすために金券の額面を控除します)。
でも、そんな問題じゃないですよね。がんばってくれた職員に、特別感を持ってもらいたい。それに源泉なんて興ざめ……。
というふつうの会社のために、源泉徴収なしでお祝いを渡す方法があります。
- 勤続10年以上の役員・従業員に(2回目以降は5年以上空けて)
- 使用期間が1年間限定のJTBトラベルギフトのカードを渡す
- 金額設定は、年数に応じて多くなるように、10~20万円程度(業界の相場が分かれば、その程度に)
- 支給後1年以内に旅行してもらい、行き先・金額・JTBトラベルギフトの使用額の報告書を提出してもらう
- JTBトラベルギフトを1年経っても未使用の場合は、返還してもらうこと
以上のことを、就業規則・福利厚生規程等で役員・従業員に周知しておくとよいでしょう。
どの社員にとっても、「来年、永年勤続表彰してもらえるぞ」と予測でき、勤続丸何年の人なら、誰でももらえるようにしておく。
そうすれば、まさに福利厚生として、従業員のやる気を引き出すという効果が期待できるので、現物給与としての源泉徴収は必要なく、福利厚生費として処理できます。
これは、ふつうの会社であれば、昔からどこでも行われている慣行なので、そこに関してまで税金はとやかく言わない(野暮である)ということです。
かといって、そういう例外的に税金がかからないという処理を悪用して、ふつうでない支給のしかた(金額が異常に大きい、特定の人しかもらえない等)をしたら、やはり税務調査で指摘を受けるかもしれません。
その際は、追加で税金を会社が払うことになります。従業員からもその分、追加で徴収することになってしまいます……。(退職している等で負担してもらえなければ、会社の自腹となります)
お給料以外で社員に金品を渡している場合、税理士に「これって源泉徴収しなくて大丈夫ですかね?」と聞いてみていただければと思います。
昨日のはじめて
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