広島市街の空撮シーンでは、平和記念公園と、隣接する中国新聞社の白い社屋が懐かしかったです。コロナで果たせない旅行気分もおまけで付いてきます。
今作は原作に遠慮することなく、『ワーニャ伯父さん』+「シェエラザード」+「木野」のマッシュアップを敢行することで、原作を超えた傑作になっていると思います。つなげ方はスムーズです。
静と動・明と暗の繰り返しが揺さぶりをかけてきます。時間をたっぷり取った表現でなければ伝わらない感慨があります。原作では回想に過ぎなかったものがリアルタイム化されたことで、今ここで何かが生まれていると感じさせます。精緻な組み合わせの説得力があります。
それでいて、「悪は、善なるはずの自分自身にも身内にも存在している」という村上作品の印象を崩しません。この矛盾に耐えられずに何人かが死にますが、その両面性を受け入れたとき、みさきの、広島で止まったままの旅が、再び動き出していくのです。

1980年生まれ。木村将秀税理士事務所・代表。主にフリーランス・独立間もない個人事業主・法人設立を検討中の方のサポートをしている。自分で経理・申告したい/顧問税理士をつけたい/記帳代行を依頼したい に対応。特技はウォーキング(最長は戸塚~小田原間 45km 14時間)、趣味はジャズ喫茶巡り・村上春樹の本・SNK対戦型格闘ゲーム。プロフィール詳細