自社が運よく災害に遭わなかったら、被災地の取引先を支援しよう

高野山にも東日本大震災の犠牲者の慰霊碑があります

先日、横浜などでは緊急地震速報が出て、周りのムードがさっと変わりました。

みんなの持っているスマホが一斉に鳴り出すのは、その主目的はともかく、「緊急事態になったぞ。早く帰ろう」とすべての人のモードをチェンジする効果があります。

危険な災害に実際に遭って、自分自身の体が緊急事態モードになったとき、花粉症がしばらくのあいだ「治った」ことをよく覚えています。

同様の体験は、関東大震災についての作家の手記などにも書かれています。人間の緊急事態モードというのはすごいなと感じました。

自社自体は無事でも、お客様が被災したら

今日はIngIngセミナーという、経営の勉強をするセミナーに参加してきました。

そこで、参加者の方々と失敗談を披露しあったのですが、失敗談というのは、本当にためになりますね。他の参加者の方も同じ感想を述べていて、同感でした。

私も若いときに失敗しました。地震で被災したお客様に、「うちの請求書、払わないでいいですよ」と言えなかったことです。それでお客様を失ってしまいました。

苦い体験です。昔のことですが、ずっと忘れずに残っています。

遠くの地震だったため、自分の会社は揺れておらず、「緊急事態モード」になれなかったんですね。

しかし、大地震が起こったら、もうその瞬間から、ふつうのビジネスシーンではないのです。無事だった会社から、被災した会社を助けるモードに切り替えるときです。

災害時、取引先を支援する場合の法人税の取り扱いを一読しておこう

災害に関する主な税務上の取扱いについて|国税庁 (nta.go.jp)

法人の方でしたら、上記のリンク先はざっと読んでおくことをおすすめします。

よく、大手パンメーカーが、災害時、自社のパンを被災地に無料配布していますが、その際もこれらの取扱いを適用しているのではないかと想像します。

ふつうのビジネスシーンであれば、請求書の代金を免除したり貸倒れにしたりしても、回収のための調査をつくしたなど、誰が見ても無理というケースでしか、法人の経費になりません。

でも、災害時は、ふつうではないのです。経費(損金)にならないからって、被災して困っているお客様への代金請求をやめられないようになってはいません。

緊急時には、税金は会社の行動を邪魔しないようになっています。下記のとおり、取引先に対する請求は、免除してよく、その損失分、自社の法人税も減少します。

(6) 取引先に対する売掛金等の免除等

法人が、災害を受けた取引先の復旧過程において、復旧支援を目的として売掛金、貸付金等の債権を免除する場合には、その免除することによる損失は寄附金又は交際費等以外の費用として損金の額に算入されます。

インボイス制度が始まって、消費税の納税も減らすには

災害に関する法人税、消費税及び源泉所得税の取扱いFAQ

消費税に関しては、上記のリンクもご一読をおすすめします。

先ほどのように、取引先の復旧支援として請求を免除したときは、自社の法人税だけでなく、消費税も減少します。

貸倒れは、収入や支出をともなわないので、消費税は関係しないと思いがちです。

消費税の課税区分の入力上も、課税売上の貸倒れという指定を忘れないようにしましょう。

その際、いちおう、その被災したお客様に「返還インボイス」(代金を減額したことを示す書類)を交付することになっています。

被災地に郵送という手間はかけさせず、メールで送っておけばよいでしょう。インターネットは災害に強いので、いずれ届きます。

自社が災害に遭うだけでなく、取引先が災害にあったときのことも考えておきましょう。

今日のコミックス

『新九郎、奔る!』17巻。8月8日に発売されていたのに気づいていませんでした。昔の保険というのは、とにかく兄弟など人的にかけていたのだなあ、ということを学びました。相変わらず、面白いです!