税理士の木村です。
「税理士にちょっと聞きたいことがある」という個人事業主の方は、法人成りを考えていらっしゃる方が多いです。
- 「法人化するなら、資本金はいくらにしたらいいですか?」
- 「何月決算にしたらいいですか?」
法律上は1円以上でいいのですが、借入を予定しているとか、決算書を見せるように言われているとかであれば、昔の有限会社の基準である300万円はあってもいいのかなと思います。
法人成りといっても実質個人企業の延長で、信用も問題ないし、すぐに売上金が入金されるというのであれば、もっと少なくてもいいかもしれません。
あまりに少ないと、すぐに社長から会社にお金を貸すことになってしまうので、資金繰り上必要な金額を資本金にするのがおすすめです。
法人成りして、2割特例を受けるための資本金の額
消費税のことを考えると、「法人化するなら、資本金を1000万円未満にして、設立時は免税事業者にしよう」というアドバイスもよく聞かれるところです。
ただ、お客様が一定規模の法人だと、インボイス登録番号を求められがちです。
インボイス登録をすると、資本金がいくらでも初年度から消費税を納めなければならないので、別に1000万円でもいいか……と思うかもしれませんが、やめておきましょう。
消費税の2割特例が使えなくなるからです。
2割特例は、インボイス登録納税額と事務負担を緩和する措置で、サービス業の方にとっては有利な制度です。
2026年9月設立までの法人化(法人成り)で、インボイス登録だけが原因で、初年度から課税事業者になる場合には、消費税について2割特例が使えます。
ですが、期首の資本金の額が1000万円以上だと、新設法人の特例が原因で、初年度から課税事業者になるため、2割特例も使えなくなってしまいます。
許認可の関係で1000万円以上の資本金が必要な場合を除き、初めて会社を設立するなら、資本金の額は1000万円未満にしましょう。
2割特例を最も長い期間受けたいなら9月設立・8月決算にする
2割特例は、2026年9月30日を含む事業年度いっぱい使えます。2026年9月末まではありません。
ということは、最長で、2027年8月期まで(2026年9月1日から2027年8月31日まで)の売上について、2割特例が受けられることになります。
売上高が2025年8月期になっても、1000万円超になる予定がない規模の会社でしたら、8月決算にするのがおすすめです。
8月決算だと、10月申告となり、税理士も対応に余裕がある人が多いです。
ただ売上がこの規模の場合、利益率が非常に高いビジネスでないと、法人成りによる法人税・所得税の節税メリットは小さくなります。
それでも、消費税を税抜売上の5%(10%の5割。簡易課税)納めるところ、2%で済む(10%の2割。2割特例)こと自体はメリットです。
また、法人であることそれ自体にも、節税以外でメリットがあればおすすめです。
厚生年金に今後20年以上入れる見込みがあるとかも重要です。
課税期間の短縮、高額特定資産などの取得
法人成り後も2割特例を使うのは、もともとフリーランスやサービス業など、人的サービスを行っていた方ですね。
通常、売上を超えるような仕入れ・設備投資(外部の売上になる)は想定されません。
ただ、売上を超える多額の初期投資が必要な場合、一般課税で申告すれば、消費税が還付される場合があります。
初年度だけの投資なら、初年度はすぐに決算日が到来するような設立登記日にするという手もあります。
もっとも、税理士の決算申告報酬もすぐに払うタイミングが来るので、注意が必要です。
還付を早く受けたい場合、課税期間の短縮を選択する方法もありますが、その課税期間は2割特例が使えません。
高額特定資産(1000万円以上の棚卸資産・固定資産)や、200万円以上の金・プラチナを買って一般課税で申告した場合も、2割特例が使えません。
高額のものを買って控除を受けたら(還付を受けたら)、それを売ったときの金額をもとに控除を受けられる2割特例・簡易課税は使えないということです。
いずれにしても、2029年9月30日までに、インボイス登録(適格請求書発行事業者の登録申請書の提出)のみを行って、課税事業者になった場合に限ります。
2029年9月30日までは、インボイスの登録申請書を提出するだけにして、課税事業者選択届出書を提出しないようにしましょう。
編集後記
Blueskyをはじめてみました。