昔、転職活動で築地の東京国税局での説明会に行ったとき、個人の所得税っておそろしい件数だろうに、どうやってさばいているのだろうと質問したことがあります。
効率的にやっているのだというような回答だったと記憶していますが。
確定申告書等の数は1年間でどのくらいあるのか
2022年分の確定申告などが、2023年3月31日までに完了した件数は、22,924,173件。
これに対し、国税庁の人員はわずか56,380人(2024年度の定員)。0.2%に過ぎません。
個人に対する税務調査(実地調査)は、47,528件(2023年7月から2024年6月まで)で、やはり0.2%。
1000人に2人しか実地調査を受けていないというのが、個人の税務調査の実態です。
もちろん、電話だけ・郵便だけ、の「簡易な接触」という調査もあり、年557,549件行われますので、これもカウントすれば、確定申告等をした人の2.6%に、税務署から何らかのレスポンスがあったことになります。
もし、レスポンスがなくても、いちがいに申告が正しかった証明にはなりません。
確定申告書等作成コーナーを使えば、計算誤りについてはエラーが出るので、そちらでチェックしたほうがミスは減らせます。
調査を受けやすい申告書とはどういうものか
それでも実地調査自体はあります。
国税庁は、去年から本格的に「AI」に申告漏れがあった事例を学習させ、申告書の不備が多かったりきりのよい金額で申告したりしている人や現金収入が多い業種など、申告漏れのおそれのある納税者を重点的に調べる税務調査に取り組んだ結果、追徴税額が最も多くなったとしています。
所得税の追徴課税1398億円余 過去最多に “AI取り入れた結果” | NHK | 生成AI・人工知能
この記事、さらっと重要なことが書いてあったので引用します。(いずれリンク先が消えてしまいますが)
- 申告書に不備が多い
- キリのいい金額で申告している
- 現金収入が多い
というのが、AIが調査対象に選定した申告書の特徴のひとつであると。
これは、報道資料にはなかったので、NHKが独自に取材したのだと考えられます。
私も、税金じゃないですが昔は調査の仕事をしていたので、怪しい数字・信頼できる数字については勉強しました。
古くから、「ウソのゴサンパチ」と言われていますが、感覚的なもので、実際もそうかは何とも言えません。
逆に本当の数字の傾向はわかっていて、統計上は、一番上の桁が「1」であるものが、ウソの確率が低い数字なのだそうです。
他方、国税庁が、過去の申告事例と調査結果とをAIに分析させると、叩けばホコリが出る申告書は、「*,000円」みたいな数字が並んでいる傾向があるのだと。
もちろん、不動産賃貸料とかだったら、キリがよくても問題ありませんが。
あと気をつけたいのは、消費税の納税義務が発生する1000万円超にならないよう、売上を抜いていると疑われる900万円台後半の売上高とか、数年間にわたって十分な給与所得があるのに事業所得の赤字により還付を受けている申告とか、ですかね。
税理士がついている個人事業者は調査を受けるのか
税理士がついていても、税務調査が入ることはあります。
ただ、調査が入る確率を下げることはできます。
お見せいただいた資料の範囲内で不備のない申告書を作成するのが仕事ですし、数字にもれがありそうかチェックしますし、現金売上なら、1日分の売上金額そのまま、銀行口座に入金するようにお伝えします。
現金売上からは、それを他の用途に流用しないルールにして、できるだけその日のうちに入金する。防犯にもなりますし。
2冊の本を読んで、不正防止の観点をさぐる – 税理士 木村将秀のブログ
通帳を現金出納帳の代わりにしてしまうのです。(キャッシュ・イン・バンクという方法。この単語で検索してもほとんど出てこないですね……)
売上・利益を正確に計算して、自分のビジネスが本当に効率的か知ろうとするのが、疑われない申告の第一歩です。
編集後記
Kindle本、発行しましたが、レビュー中でまだ売ることができていません。意外とできたな! という喜びが。