内装工事、造作工事、仮設工事の請求書をどう配賦・按分して入力するか

横浜市港南区の税理士、木村です。

独立開業するとか、新店舗を出すとか、店内を改装するとか、建設会社や大工さんのお世話になることがあります。

その場合、100万円単位の請求書や見積書を受け取ることになります。
これも、会計ソフトに入力するのですが、金額が金額なだけに、間違えたときのリスクが大きいともいえます。

それでいて、しょっちゅうある取引ではありませんので、入力するにあたって、手が止まってしまうのでは……と思い、記事を書いてみました。

ちなみに、大手に依頼したのでなければ、請求書は建設会社の方がExcelで作っています。
手書きのこともあります。

意外と、そもそも請求書が間違っていることがあります。
「消費税額が、税抜額の10%になっていない」というのが、よくある間違いです。

金額も大きいので、おかしな数字があれば、先方に確認しておきましょう。

工事が続く関内駅前

○○工事の単位ごとに集計する

以前も、工事代金の請求書の入力方法は、ブログに書きました。

Excel 365 で OCR 「画像からデータを挿入する」で工事代金請求書の按分計算を手軽に – 税理士 木村将秀のブログ

最近では、AIに画像を読み込ませてExcel形式にしてもらう方法もありますが、内容を改ざんされがちなので、確認は必要です。

基本的には、解体工事・間仕切り工事・造作工事・電気工事・設備工事・内装工事・仮設工事といった、〇〇工事の単位で集計することになります。

具体的な工作物名があれば、その単位です。(カウンター設置など)

念のため、同じ工事内で、複数の単位に分けるべきものがあるか、確認しておきましょう。

意外に時間がかかる経理業務が、この工事費の請求書の処理です。
私は、ここで悩んでいたお客様に、単発相談で仕訳を作成・提供したこともあります。

配賦・按分すべき費用を集計する

請求書の項目のうち、養生費・運搬費・処分費・諸経費・現場管理費・出精値引き(マイナス額)・消費税等は、共通費用です。

これら共通費用の合計額を出します。

共通費用の合計額×各工事の個別の金額÷各工事の合計額=各工事に共通費用を配布した金額となります。

この際、配賦後の各工事の金額の合計が、請求書の合計額と一致していることを確認しましょう。

按分の過程で端数処理が生じたために一致しない場合には、一番金額の多い工事のところに1~2円加減して、請求書の合計額に一致するように調整します。

これが、最終的な各工事の金額です。

これを、勘定科目や固定資産台帳の項目に分類するのです。

仕訳の勘定科目・固定資産台帳の登録をどうするか

まず、解体工事ですが、これは内容を確認しましょう。

本来の設備を搬入するために、既存の設備を撤去した場合の解体費は、移設費用として、修繕費となります(法人税基本通達7-8-2(2)、(平成24年2月6日裁決) | 公表裁決事例等の紹介 | 国税不服審判所)。

移設によって価値が高まる場合は取得価額にするという通達(同7-13-12)もありますが、そこでも解体費は取得価額から除かれているためです。
多くのケースでは、修繕費でよいでしょう。

カウンター(店用簡易装備)は建物附属設備、看板(看板及び広告器具)は工具器具備品です。
法定耐用年数はともに3年です。

電気工事(電気設備・その他のもの)、洗面所・トイレ・排水管(給排水又は衛生設備及びガス設備)は建物附属設備にします。
法定耐用年数はともに15年です。

間仕切り工事・造作工事・内装工事は、建物とします。
借りている建物に対する工事であっても、勘定科目は建物です。

この賃貸物件にかかる「建物」部分の耐用年数は合理的に見積もるものとされており(耐用年数の適用等に関する取扱通達1-1-3)、悩ましいところです。

ただ、実物を見て、よほど特殊なものでなければ、15年としておけば、大きな問題にはならないでしょう(税大ジャーナル 36 2024.6 リスキリング、副業、起業の際の所得課税上の留意点)。

なお、定期借家の契約で、「10年で出て行かなければならない」という場合であれば、耐用年数は10年となります。

通常、経理方式を問わず、仕訳は税込金額で入力します。
これに対し、固定資産台帳への登録は、税抜経理の場合、税抜金額にしますので、注意が必要です(税込経理なら税込金額)。

以上、一般的な例を示しましたが、実物・金額・内容を確認して、判断することが必要です。

編集後記

今日は月初の顧問のお客様に対する請求業務、顧問業務、Kindle本(複式簿記)の執筆など。

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