NPO法人会計基準の純資産(正味財産の部)の注意点

NPO法人会計基準では、会計ソフト(複式簿記)により、貸借対照表を作成する必要があります。

会計ソフトは、通常の営利法人向けのものでよく、決算書だけNPO法人会計基準に則って作成すればよいです。
経理の方法自体は、ほぼ同じですので。

ただ、この場合、活動計算書・貸借対照表が自動的に作成されるわけではないので、NPO法人からの決算のご相談に乗ることがあります。

特に、ふつうの会計ソフトでいうところの純資産の部、正味財産の部については、いくつか注意点があるので、お伝えします。

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財産目録の作成はどうするか

資産の部と、負債の部については、財産目録の作成が義務付けられています。

では、正味財産の部はどうでしょうか。
疑問に思う方もいらっしゃるのではと思います。

答を先に書けば、会計基準に、正味財産の部の財産目録の作成については書かれていませんので、財産目録で内訳を明示する必要はありません、

NPO法人会計基準の様式5「財産目録」をご覧になればわかるように、「正味財産」は1行で合計額だけを示せばいいようになっています。

そもそも正味財産は、資産-負債。単なる差額です。
財産としてリアルな実態があるものではありません。
手に取って「これだよ」と見せることができないので、正味財産の財産目録は必要ありません。

指定正味財産の部と一般正味財産の部に区分するケース

貸借対照表においても、原則として、正味財産の部の区分はしません。
やはり、合計額があるだけです。

ただし、NPO法人であっても、例外的に、正味財産の部を区分するケースがあります。
財産目録はいりませんが、貸借対照表のほうで分けるのです。

それが、「寄付金、助成金・補助金」のうち、お金の出し手との合意のもと、このお金の使い道が指定されているケースです。

さらに、その金額が多額であり(重要性が高い)、事業年度をまたいで支出されるため、資金提供者などに誤解を生まないように、情報提供する必要があるときに限ります。

重要性が低い場合は、注記をすれば済みます。

もともと、公益法人会計基準にあった考え方(公益法人会計基準(令和6年12月)131.)ですが、これをそのままNPO法人会計基準(注解 注6)に取り込んだものです。

行政から給付される「委託費」は区分の対象か

助成金・補助金は、自治体などから受け取るお金です。

このほか、地方公共団体から受け取るもので似たものとして、「委託費」があります。

保育所を運営するNPO法人が受け取る委託費などがそうです。
「委託費」という名前ですが、行政視点の言葉なので、NPO法人にとっては収益です。

これも、使途が特定されており、指導監査で厳しくチェックされます。
NPO法人の運営本部の費用に充てたり、保育園の開設費用に充てたり、ましてや職員への貸付金に充てたりすると、監査で指摘を受けることになります。

また、原資は税金ですから、流動資産-流動負債(当期末支払資金残高)が委託費の30%を超えてもダメです。
税金をNPO法人が貯めこむことは、よしとされません。

では、これも使途が制約された寄附金、助成金・補助金として、指定正味財産に区分する必要があるのでしょうか?

答は、必要ありません。

行政から受け取る委託費は、ただでもらうだけのお金ではなく、何かをしたからもらうお金、代金の性質があるからです。
(公益法人会計基準の運用指針(令和6年12月)65.)

したがって、通常のNPO法人では、正味財産の部を区分することは、あまりないのでは、と考えます。

近況報告

今日もセミナーを受講したり、立教大学寄附講座のタイトル案を出したり、地積規模の大きな宅地の検討をしたり。
あと、税理士の業法上必要な業務処理簿の入力を進めたり。
その後、ウェルスプロファイルという自己分析法を本で読んで、簡易テストをやってみました。スチール、メカニックという、まあそうだろなという結果でした。

1日1新:ウェルスダイナミクス