本当に多額の贈与をしてよいのか考える

相続税対策ということで、子供や孫への贈与をお考えになる方も多いと思います。

私は、財務省の税制メールマガジンを購読しているのですが、先日、こういう話が載っていました。

「税金がかからずに一気に多額の贈与をできる制度を利用したのだが、その日以来、孫が遊びに来なくなってしまった」

このお話は、他山の石にしたいですね。

自分が死んだあとトクすることを考えた結果、生きている間の喜びが減ってしまう。

死んだあとのことは、言ってしまえば自分には関係のないことなのに、そこでトクをして、いま生きている自分に関係あることでソンをしてしまう。

こういうのは避けたいですね。税金のためだけを理由に、自分の行動を決めてはいけません。

贈与をするなら、理由と相場を調べて実行する

相手が子や孫であっても、何の理由もないのに、お金はあげませんよね。

自分の相続税を減らしたいだけの理由で極端な贈与をしたら、あとで贈与と認められず、かえって相続時に残された人たちに迷惑をかけてしまうかも。

いきなり100万円を振り込んだり、というようなことです。相続開始後に通帳を見た人が「これはなんだ」と思いますよ。兄弟姉妹のもう一方がもらっていなかったら、相続争いになるかもしれません。

そこで、贈与と認められる、ふつうの贈与を重ねていくことをお勧めしています。これらはそもそも、贈与税がかかりません。

息子さん、娘さんたちの様子をよく観察して、要所要所で、世間相場のお祝い金や、見舞金をあげればいいのです。

具体的には、お葬式の香典・花輪代、孫へのお年玉、引っ越し祝い、就職祝い、結婚祝い、出産祝い、開業祝い、入学祝い、入院お見舞いなど。

むかしは冠婚葬祭マナー本、いまなら、Bing チャット(Copilot)で、「親から子へ 祝い金 or 見舞金 相場」と質問すれば、世間相場はわかります。

相場は、誰から誰へ、何の場合に、によって変わるからです。慶事やお困りごとによりますが、2万円から5万円くらい、そのイベントのつど、差し上げてはいかがでしょうか。

金額は、その都度の相場のほうがよい理由

祝い金・見舞金の相場は、調べればわかりますが、案外少ないなと感じるかもしれません。

しかし、その相場が決して高くないのも、理由のないことではありません。

一度に多額のお金をあげてしまうことの、副作用を考えれば、自然とこのくらいにしようかな、と思えてくるものです。

あまりに多くを子供たちにあげてしまうと、勤労意欲をそいでしまうかも。多くを孫にあげてしまうと、心配になって通帳やはんこを祖父母や両親自身が管理したくなって、けっきょく、贈与にならないかも(もらった人が自由に消費できる状態でないといけません)。

金額を増やしたいなら、生活費・教育費としてその都度あげる

贈与ではなく、扶養義務の履行として生活費や教育費を出す方法もあります。

孫の入学金や、その年の学費を出してあげれば、金額としては大きくなります。教材費、ランドセル代なども。

あと金額が大きいのは、結婚式の費用を出してあげるとか。子育てに関する費用も。孫のベビーカーも買ってあげましょう。

子の家族の入院に多額の費用がかかった。入院費を聞いて、実費を出すこともありでしょう。

あげたお金が、子らの手元に残らず必要なことに消費されるように、あげるのです。

もらった人が、負担にならないように。一定のイベントが発生した子供たちなら誰でももらえるようすること。不公平感を感じさせないことが、本当の相続対策になるはずです。

お金をあげたら、孫が遊びに来なくなる。そんな贈与は失敗です。そうならないような贈与を実行されてはどうでしょうか。

今日の村上春樹

  • 朝日新聞2024/2/11朝刊2面に、村上春樹さんによる小澤征爾さんの追悼文が載っていたので、新聞の自動販売機で購入しました。にゅーっと出てくるのが新鮮でした。
  • 村上春樹の書いた文章ならなんでも買う。いまなら推し活というのでしょうが、この言い方にはなじめません。自分のやっていることは、推し活なのでしょうか……。違うと思うんですけど……。