初めての消費税申告、2割特例でもできるちょっとした節税

2023年の10月以降にインボイスに登録して、初めての消費税申告書を作成されている方も多いと思います。

期限は、2024年4月1日(月)※通常は、3月31日(平日)ですので、まだまだあわてるような時間ではありません。

2割特例は、設備投資の少ないサービス業、IT業界のエンジニア、工具一本の一人親方、物件を取得していない年の不動産賃貸業の方にとって、納税額が少なくてすむ制度です。

売上だけから納める消費税を計算します

インボイス制度が始まってから、経費を払ったときにもらうレシートに登録番号が印字されているのも、めずらしくありません。

が、インボイス制度を機に消費税を納めることとなった方は、経費のレシートの登録番号は、無視してかまいません(所得税の計算のため、保存は必要です)。

売上高だけから、消費税を計算するからです。具体的には、税込売上金額(=請求金額)を税抜に直し、それに10%(食品の販売・週2回以上発行新聞の定期購読者への販売は8%)をかけた金額の、2割を納税します。

2023年分限定のポイントは、インボイスに登録した日から年末までの売上のみ、集計することです。

売上に関する値引きがあれば、集計しておきましょう

よくあるのが、請求書を出して、銀行口座に入金してもらうとき、振込手数料相当額を差し引かれて入金されるケース。

会計ソフトでは、「支払手数料」や「雑費」で処理していることが多いと思います。その場合、摘要欄は、「得意先名」「〇月分売上値引」といったように入力しておきます。

会計ソフトに消費税区分コードの欄があれば、「課税売上返還」といったものを指定します。

税率については、もとの売上の税率と同じにします。軽減8%の売上代金について、手数料が減額されたら、軽減8%の代金の値引きとして入力します。

これは、インボイスに登録した日以降に発生した売上請求額について、入金時に振込手数料分を差し引かれた差額に対してのみ、行います。

注意点としては、2023年10月1日に登録して課税事業者になり、9月以前の売上が入金され、手数料を差し引かれたときには、この入力をしません。

免税事業者だった時期の売上について、入金時に手数料が相殺されても、もとの売上に消費税がかかっていないと考えるからです。

このように処理した金額を集計(または課税区分別に自動集計)し、消費税申告書の作成時に「売上に係る対価の返還等」の欄に、税率別に入力すればOKです。

2割特例が使えない、簡易課税の方も同じです

2割特例は、2026年分(個人事業者の場合)までの期間限定の激変緩和措置です。

これで納税額が少なくなる、設備投資のない方は、2割特例が使えなくなるぞ!というニュースを聞いたら、「簡易課税制度選択届出書」を提出しておいてください。

納税額は増えますが、一般課税になるよりは、納税額を抑えることができます。

振込手数料相殺を、消費税上の値引きとして処理して節税する方法は、簡易課税制度に移行してからも使えるからです。

振込手数料相殺は、ITから建設業まで、幅広い業種でみられる現象なので、消費税の納税額を減らしたい方は、この「代金を受け取っていない分」の消費税について値引きの処理をして、納税しないようにしましょう。

なお、請求書を発行した時点で、請求書上に記載がある「出精値引」「端数値引」については、これらの値引き後の金額を税込売上高で入力している限り、この課税区分を課税売返などにする必要はありません。

あくまで、入金時に振込手数料分を減額された場合、こちらの経理で課税区分上、「値引き」として扱うのです。