横浜市港南区・日限山の税理士 木村将秀です。
通勤手当は、税務上、問題になりにくい経費ではあります。
- 給与規程で社内ルールがあり、一律に適用されること
- 金額に不足があると社員が損するので、指摘を受けること
- 税込15万円/月以下の適正な金額なら源泉所得税が非課税になること
- インボイスなしで課税仕入れになること(仕訳に「通勤手当」とあればOK)
といった、根拠が明確で、社内のチェックも働きやすく、消費税などの問題も少ないからです(海外勤務の方の通勤手当は不課税ですが……)。
とくに、金額を1人で決められないので、相互牽制がはたらくことが、問題を少なくしています。
かといって、税務調査でまったく論点にならない、というわけではありません。
役員の通勤手当(定期代)を確認しよう
税務調査では、役員の通勤手当が問題になりえます。
オーナー社長が自分の通勤手当を決められることから、社内チェックが入りにくいからです。
調査官は、役員の住所と、会社の住所とを知っていますので、電車・バスの通勤の通勤定期の金額を調査官自身で計算することができます。
そのあたらめて計算した金額が、給与台帳に記載の役員の通勤手当よりうんと小さかったりすると、指摘を受けることになります。
給与計算上、非課税通勤手当となるのは、あくまで「会社の時間とお金の両方を節約できる金額」までです。
これがグリーン券代を含んでいたり(時間が節約できない)、定期代の実費より多すぎたり(会社が損して役員が得している)すると、源泉徴収もれになってしまいます。
なお新幹線代はOKです。時間が節約できますので。一度、金額を確認してみませんか?
営業で飛び回るため、月額で一律支給している交通費がある場合
通勤手当とは別に、営業で飛び回るので、月額〇〇円と決めて交通費を支給してはいませんか?
一定額を毎月・毎年として支給していた場合は、給与として源泉徴収が必要になります(事後に記録から実費が証明できた分を除く。所得税基本通達28-3)。
交通費の精算が手間だから、ついざっくりした処理になってしまっている……というのでしたら、
- 会社でSUICAなどのデータで交通費の記録が取れるしくみを採用する
- 交通費精算システムを入れる
などといった対応を考えてみてはいかがでしょうか。
金額の変更に注意
社員の通勤する先が変更になったり、消費税率が上がったり、運賃が改定されたりして、通勤定期券の金額が変わったときは、注意が必要です。
次に通勤定期代を支給するタイミングで修正しましょう。
また、6カ月分の定期代を前払で支給していた社員が退職することがあります。もし、給与規程で返金してもらうことが決まっている場合は、一定額を返金してもらうことになります。
仕訳としては、 現金/通勤手当 ×××(課税仕入れ) といったものが考えられます。イレギュラーな処理となるため、入力もれに気をつけましょう。
今日のひとくち源泉所得税
質問:新聞販売店です。朝刊の配達員の住まいとして、店舗の上階にある寮(社宅)を指定しています。家賃は無料です。タダで寮に住めることについて、他の現物給与のように、源泉徴収は必要でしょうか?
回答:必要ありません。
早朝勤務を常例とする牛乳販売店等に住み込む使用人への部屋の無償貸与は、業務上の必要性がきわめて高いため、非課税とされています(法9条1項6号、令21条1項4号、所得税基本通達9-9(4)イ)。
新聞販売店は、牛乳販売店を兼業するケースがあります。その朝刊配達員は、通達で例示されている牛乳販売店等の使用人と同様の働き方(早朝の配達)をすると考えられることから、同様に非課税(源泉徴収不要)となります。