昔買った家を売る。または、親から相続した家に長年住んだが、ついに住み替えることになった。
という方には、税制の優遇措置が二重に受けられることがほとんどです。
3000万円の特別控除と、軽課税率の特例です。
その際の注意点をまとめました。
買った金額が分からないことが多い
長い時の流れのうちに、買ったときの売買契約書が紛失しがちです。
まったく分からない場合は、売った金額の5%を経費にして申告せざるを得ません。
ただ、古い家の場合は、高度成長期からバブル期を通じて、地価が非常に高騰したため、実際に買った金額が売った金額の5%程度であることがあります。
昭和30年代前半以前に買った土地建物の場合です。
この場合は、売った金額の5%を経費にしても、それほど損したという感じではないです。5%のほうが高いこともあります。
しかしよく書類を検討すると、5%で申告する必要がない場合もあります。
売却益が非常に大きい場合は、お近くの税理士に相談してみるのがいいでしょう。
建物の金額が分かるが、それが非常に古い場合
昔は、分譲時は土地だけ販売して(購入のために徹夜の行列ができたといいます)、あとから家を建てることもありました。
その場合、建物の建築請負契約書だけは残っているパターンがあります。
これなら買った金額が分かる! のですが、その場合でも、木造で築40年以上経っている場合だと、買った金額の5%しか経費にならない場合があります。
この場合だと、やはり売った金額の5%の方が高いということもありえます。
概算取得費を使う場合の注意点
この、売った金額の5%を取得費とするのを、概算取得費といいます。
概算取得費で確定申告するのを場合、国税庁公式の「確定申告書等作成コーナー」では、取得費の入力を完全に省略することもできます。
分離課税の長期譲渡として、経費のうち、取得費が売った金額の5%(利益率が95%)で計算してくれます。
どうせ5%だから……と思って省略しては、いけません!
取得費の入力を省略すると、軽課税率の特例を受けない申告となり、余計な納税をしてしまうことになります。
取得費の入力画面に、取得日の入力をすることで、軽課税率の特例が受けられるようになります。
特例を受けるための条件がずらっと表示されますので、よく確認しましょう。
1個でも条件から外れると、特例が受けられませんので。
また、3000万円特別控除を受けることで、税金のかかる売却益は減るのですが、各種所得制限の計算上は、この3000万円特別控除を受けなかったものとして判定されます。
古い家を売って、3000万円控除では引ききれない利益が出ると、残念ながら、ほとんどの場合、配偶者控除・基礎控除・定額減税などが受けられなくなります。
不動産の売却以外にも所得がある場合、通常生じない納税が必要になることもしばしばです。
売却益の預金は、一気に使わず、しばらく取っておかれることをおすすめします。
編集後記
関内で横浜商工会議所の仕事をし、戻って散髪。その後は2時間で一気に確定申告を仮完成させる。
また、去年に引き続き、確定申告のご依頼をいただきました。