開業費を経費にしないで黒字化する

開業時は、なかなか黒字にならないのがふつうです。3年くらいは、本業であっても赤字が続くこともあるでしょう。

でも、借入のため決算書を銀行に見せる必要があって、赤字を小さくしたい、黒字にしたいという場合もあると思います。

税務署用と異なる、銀行用の決算書作成はもちろんNGですよ!(私は税理士なので、粉飾決算はお手伝いしておりません)

あくまで実際の収支をベースに、経費にしないで済む支出がないか、調べてみましょう。その一つが、開業費です。

初年度は、開業費になるものを拾ってみよう

開業するにあたって、土台となるものに払うのが、開業費です。

個人の事業(本業・副業)のほか、不動産賃貸業で利用できます。(事業所得・雑所得・不動産所得。あと伝説の所得:山林所得で……)

開業費とは、その支出をしなければ、開業する(将来の収入を得る)ことができない経費です。

だから、その支出に対するサービスを受け終わったあとも、その効果が来年以降も続くと考えられます(このお金をかけて開業したから、今年も来年も再来年も……売上が立てられるという意味で)。

そこで、いったん開業費を貸借対照表の資産(繰延資産)に計上することで、今期の経費から除くことができます。

したがって、開業費は、黒字に近づけるための手段として使えます。

何が開業費になるのか。それは、まだオープン前(収入が発生する可能性がない、開業準備期間)に支出した、次のようなものです。

  • オープン前の店舗の地代家賃
  • オープン告知の広告宣伝費
  • オープン前の期間に対応する支払利息
  • オープン前の人件費
  • オープン前の水道光熱費

これらは、いったん資産計上して来年以降に持ち越し、大きな黒字が出た年度に経費にして、その黒字でまかなってもらうことができます。

法人なら、さらに創立費を拾ってみよう

会社(法人)のほうが、経費の範囲が広いと聞いたことがあると思います。

法人なら、法人を設立するために払った費用は「創立費」として繰延資産に計上し、開業費と同様に、決算書上の経費を減らすことができます。そして、大きな黒字が出たタイミングを選んで経費にできることも同じです。

  • 定款作成費用
  • 創立準備事務所の家賃
  • 発起人への報酬
  • 設立登記の登録免許税、司法書士の報酬

個人事業主の場合は、残念ながらもう人間として完成していますので、創立費はありません。

開業費になりそうで、ならないもの

事業によっては、ある団体に強制加入しないと、始められないものがあります。

税理士だと、税理士会への入会金や入会時負担金、登録免許税があります。税理士登録をして、即独立開業! となったタイミングで払うと、いかにも、開業準備のための費用のように思えます。

でも、違いますね。税理士は、「独立開業しなくても、税理士会の入会金や負担金、登録免許税を払うから」です。

その業種の人がみんな払っているものでも、独立開業していない人も払っているものは、開業費とは言えません。

ですが、これも繰延資産として資産計上できます。開業費も繰延資産ですが、ちょっとタイプが違います。

この繰延資産は、開業費と異なり、5年間で徐々に経費化する必要があります。開業費はいつでも好きなときに経費化できますが、これは経費にするタイミングが決まっています。

経費にならないものは、開業費にもならない

あと、その業種の人が払っている政治連盟の会費も、開業費にはなりません。医師会とかにもありますが。

政治連盟会費も、人によっては独立のタイミングで払うのですが、払うかどうかは独立する人の中でも任意ですし、あくまで議員を応援するための費用ですから、そもそも経費ではないためです。

意外に判定が難しいので、迷ったら税理士にご相談ください。→単発相談

開業費(繰延資産)の注意点

開業費や繰延資産を資産計上したのは、あくまで支出を経費にしないための経理処理であって、お金はすでに出て行ってしまっています。

これで決算書を黒字にしても、お金は減っていて、戻ってこないことはお忘れなく。

また、ずっと赤字だと、この開業費などを経費にするタイミングを失ってしまいます。特に、最終的に廃業してしまった場合は、永遠に経費にできません。

開業費を払ったら、この分のモトはとれるように、営業をがんばっていきましょう。


今日の読書

  • 『隣り合わせの灰と青春』ベニー松山。Kindle版。ウィザードリィ小説の金字塔。30年ぶりくらいに読み返しました。
  • 『#神奈川に住んでるエルフ』鎧田。意外に(失礼)面白かったです。翔んで埼玉みがある。神奈川新聞の連載でおなじみ。「横浜駅の工事いつ終わるんだよ! 完了前にエルフの寿命が来てしまうぞ!!」は最高の1コマ漫画ですね。