労働者派遣事業(人材派遣会社)と消費税

ITエンジニアを客先に常駐させて仕事をさせるなどの仕事は、偽装請負とされないよう、人材派遣会社が行うことが多くなっています。

人材派遣会社は、消費税の納税が大きくなりがちな業種です。税抜売上の10%近くを納めているような状況になるでしょう。

それを抑えられるのは、簡易課税制度が使える時期だけとなります。税抜売上の約5%を納める形。

2年前の売上高が5,000万円以下のときだけですね。

会社設立したばかりでも、2割特例はほぼ使えない

インボイス制度をきっかけにインボイス発行事業者になった場合だと、2割特例という、税抜売上の約2%(10%の2割)を納める制度が利用できます。

簡易課税(10%の5割)を納める制度より有利ですが、人材派遣会社の場合、なかなか難しいのではないかと。

労働者派遣事業の許可を受けるのに、純資産2,000万円が必要だからです。

すると資本金1,000万円以上で設立しがちになり、この場合、インボイス制度と関係なく1期目から消費税の課税事業者になりますので、2割特例は使えません。

設立時だけ、1,000万円未満で始めて、増資すればいいのかもしれませんが、手間がかかるのでおすすめはしません。

また、売上5億円超の会社のオーナーが人材派遣会社を作っても、最初から課税事業者なので、2割特例は使えません。

簡易課税が使えるうちに、お金を貯めて、将来に備えよう

簡易課税でも十分に有利ですので、創立間もない、経理体制も売上も小さい時期を応援してもらっていると考えて、いまのうちに、お金を貯めておきましょう。

簡易課税が使えなくなると、急に消費税の納税が増えてしまいますが、ちゃんと納税額を予想して貯金しておけば、納税のときにびっくりしないで済みます。

会社の納税用の別口座に売上の9%程度を毎月移しておくか、ダイレクト予納をしてみるとかで、「使ってはいけないお金」を管理しておきましょう。

将来のお金が出ていく金額の管理に、税理士を活用してみるのも手です。毎月、いくら貯金しておけばいいか、お伝えできます。

簡易課税を維持するために、売上除外をしてはいけない

売上が5,000万円を超えると、その2年後から簡易課税が使えなくなり、一般課税に戻ります。

いきなり納税額が2倍近くになります。しかも、一般課税初年度は中間納付が簡易課税時代の納税額ベースなので少なく、決算月後2カ月以内に納める確定納付が莫大な金額になりがちです。

「じゃあ、この売上、なかったことにできないか……」、それはダメです。

売上をなかったことにするために、ふつうやらない動きをすると、なんとなく周囲にバレて、税務署に通報されてしまうかもしれません。

課税・徴収漏れに関する情報の提供|国税庁 (nta.go.jp)

人材派遣会社が、売上除外で脱税をして消費税に関して罰金以上の刑になると、インボイス登録ができなくなりますから、そんな派遣会社と取引してくれるお客様は見つけられないでしょう。

正々堂々と、売上を上げていきましょう。

消費税ひとくちメモ

Q. 個人事業主(不動産賃貸業、個人事業)が、事業用資産を売った場合の売却益は、譲渡所得になります。その一方、税抜経理の場合、譲渡所得から消費税清算差額が発生します。これは譲渡所得(売却損益)に含めるのでしょうか?

A. 含めません。税抜経理の場合、不動産賃貸業の建物などを売ったときの消費税清算差額は不動産所得とし、個人事業の自動車などを売った場合の消費税清算差額は事業所得とします。
なお、不動産所得・事業所得が税込経理の場合は、譲渡所得も税込経理となり、消費税清算差額は生じませんので、消費税精算差額相当額も譲渡所得に含まれることになります。

参考:消費税法等の施行に伴う所得税の取扱いについて…2(税抜経理方式と税込経理方式の選択適用), 6(仮受消費税等及び仮払消費税等の清算)、12(譲渡所得の基因となる資産の譲渡がある場合の処理)