インボイス後の価格交渉のポイント

売上の約2%を納めるのが、インボイス制度開始当初の「初めての方にやさしい」消費税です。(2026年分の確定申告までの期間限定な「やさしさ」の予定ですが……)

インボイス制度の開始当初は、いままで消費税を税務署に納めていなかった方に対しては、ショックを和らげようという配慮がされています。

しかし、そんな配慮がされていたとしても、いままで納めなくてよかった消費税を納めることになるので、当然、追加の負担ということになります。

税込売上(収入額)の約2%を納める以上、手取りは減る

ということは、手取りをいままでと同じにしたければ、お客様に税込金額の約2%の値上げを受け入れてもらうか、同額の経費を下げるか、生活水準を下げるかしなければならないことになります。

インボイスに登録せず、免税事業者のまま税込価格を据え置けば、手取りはいままでと同じになるので、これができればベスト。

しかし、そうはいかないということもあるでしょう。

約2%の値上げ(厳密には1.85%ほど)、可能でしょうか。

それが不可能なら、経費(人を雇っていれば人件費、いなければ生活水準)を下げるか。

「インボイスで廃業しなければいけない」という声があるのは、こういった対策がとれなければ(インボイス登録したのに価格が据え置きならば)、手取りが減ってしまうからです。

振込手数料買い手負担で実質値上げも

2%の値上げ要求が難しければ、入金時に差し引かれている振込手数料を、お客様負担にするとお願いしてみるのも手です(もちろん、これも立場上難しいでしょうが)。

33,000円の代金入金につき、660円引かれていたのが引かれなくなれば、2%値上げしたのと同じ効果があります。

最近は「今後は振込手数料を買い手負担でお願いします」という文書もよく見かけることろです。

もともとは、振込手数料分売り手負担に返還インボイスが必要(改正でいらなくなりました)という話があり、そのきっかけで買い手負担に転換する話が出始めていたのですが。

税制の改正に乗っかって、自分のやりたかったことの交渉をする、というしたたかさも発揮したいところです。

大企業にとっては登録事業者に支払う110万円も、免税事業者に支払う100万円も、同じコスト(2029年10月から)

買い手が大企業の場合、インボイスのない仕入れは、消費税を一部引けないので、今は一部引けない分の値引き交渉をしてくることが多いですが。

インボイス開始7年目(2029年10月1日~)からは、「やさしさ」が撤廃されるので、消費税が全部引けなくなります。

大企業は税抜経理をしていますので、インボイスをもらえれば、110万円支払っても、10万円は消費税が引けるので、コストは100万円と認識します。

インボイスがもらえなければ、100万円支払ったときにコストが同額の100万円になるのです。

なので、「登録したら110万円払うけど、しないと100万円だよ」というオファーもありえます。

大企業の経営成績は税抜金額で判断されるので、買い手にとってはどっちでも同じことなのです。

売り手としては、インボイス登録に乗っかって10%高い報酬を得られれば、その10%全額を納税するわけではありませんので、手取りが純増になる可能性もあります。