『新九郎、奔る!』の読み方

14巻が発売されたので、7巻から読み返してみました。

太田道灌が死んだので、太田道灌の初登場の回から復習したのです。

この漫画は、漫画とは思えないくらいに情報量が多いので、アンチも多いですね。

漫画と思って読んでいたら、高校日本史の図説を読まされているみたいで、脳がオーバーフローしてしまうからかもしれません。

ジャズを、ポップスと同じ音楽だと思って聞いていたら、情報量の多さ(メロディーの憶えられなさ)にびっくりしてやめてしまう人に似ています。

ジャズと同じで、1回読んだだけでは分からない漫画です。

ふつうの漫画は1回読めばわかりますけど、ジャズのメロディーを憶えるために何度も繰り返し聴くように、作中の情報を把握するために、何度も繰り返し読む必要のある作品です。

形式的には漫画ですけど、実質的には漫画ではない、アバンギャルドな作品だと思います。

で、理想的には、重要人物が死んだら、その人の初登場の巻から最新刊まで読み直す方法をおすすめします。

そんな時間がない!と言う方は、初登場の巻だけでもいいです。

それで当時の状況が整理されて、現在の状況が理解しやすくなります。

歴史物なので、オチは決まっているのですが、未来の歴史を知っていると、「ああ!これ、あそこへの伏線なんだな!」と一層楽しめます。

新九郎が、「ここが北条!」「韮山に登りたい!」と叫ぶシーンなんて、なかなかでした。

といってもお堅い作品ではなく、凝ったギャグも楽しめます。カタカナ語が出てくるのは分かりやすいですが、現代の日本語ネタもまぎれています。また、荏原に行く前に、新九郎がJR西日本の特急券を手にしていたり、スーツケースに荷物を詰めたりしているなど、描き込みによるギャグも笑えます。

この情報量の多さと、ストーリーの流れをギリギリ両立させている傑作です。パトレイバーファンだった方にもおすすめします。