親名義で買った家に子を住まわせるという相続税対策

成人した子のために、親の名義でマンションや戸建てを買ってあげるという相続税対策があります。

親の名義の土地建物に、子の一家を住まわせる。別に家賃も取らない(使用貸借)。

現金の額面どおりの財産評価を、不動産の財産評価に下げるというものです。小規模宅地の特例は使えませんが、現金よりは下がります。

もちろん、それができるのは資産家の方に限りますが。

これが何で贈与にならないか

一見、贈与みたいですが、形式的には、名義が親のままなので、贈与ではないんですね。

しかし、形式的に親の名義で、実質的に贈与(1人暮らしの子に、親名義の超高級マンションに住まわせるなど)という異常な事例は、贈与と認定されるおそれもあります。

家賃相当額が、1人あたり、年110万円を超えてしまうという意味もあり、それができない他の人との公平が害されるという理由もありで。

しかし、通常のマンションや戸建てであれば、贈与と認定されることはないでしょう。

ある意味、これは、ふつうのことだからです。

子が、たまたま豪邸に生まれたら、子に贈与税がかかるか

都心のとんでもない豪邸にお住まいの方に、子が生まれたら、その豪邸の家賃相当額は1人あたり年110万円を余裕で超えるでしょう。

でも、0歳のころから、その子に家賃相当額に対する贈与税がかかるかといえば、かかりませんね。

親の家に子がただで住むのは、ふつうの、あたりまえのことだからです。みんなそうだからです。

子が成人して家庭を持ち、生計が別だったとしても、豪邸ならそこの一区画にずっと住み続けるかもしれない。

家賃分、得しているようなものですが、これも同じ状況です。

成人した子の家を親名義で買って住まわせても、これと同じ

同じ豪邸の屋根の下にいなくても、それが別棟・別のマンションであっても、親名義の家に子が住んでいれば、この豪邸の例と形式的にも実質的にも同じ状況です。

豪邸の子が課税されないなら、豪邸でもないふつうの親名義の住宅に住んでいる人も課税されないという考え方です。

地方でしたら、広い土地に母屋と離れがあって、全部親名義で、子夫婦が離れに住んでいるのと同じです。

親へのメリットも、子へのメリットもあるでしょう。

しかし、税・金銭メリットばかり見ていてはいけません。親の家に住んでいると、子の独立性が損なわれるかもしれません。独立心のある子なら、「親名義の家に住むのは嫌だ」となるかもしれません。

そうなってから、住宅取得資金の贈与のような、贈与税の特例を検討すればいいのではないでしょうか。

特別な税の制度があるから、いきなりそれを検討するというのは、避けたほうがよいと考えています。