今日は立教大学で所得税の講義を聴講したのですが、学生からするどい質問が。
「103万円の壁は変わらないのに、最低賃金が上がり、扶養の範囲内で働くことが難しくなっていることについて、どうお考えですか」
といった内容でした。講師担当の税理士の方と、担当教授がお答えになっていました。
まあ結局、103万円の壁を変えないのは、静かな増税をしたいからなんですよね。
諸外国ではいわゆる103万円の壁を変えるところもある
インフレや不動産価格の急騰に対して、税金が対応してきた歴史はあります。
相続税の基礎控除が上がったのも、バブルで土地が値上がりしたからで、最近、基礎控除が下がったのは、土地が値下がりしたからです。
いわゆる給与の103万円の壁についても、給与所得控除や基礎控除について、諸外国ではインフレに応じて増やしているところもあるそうです。
ただ、日本は国債の残高や利払いがどんどん増えているので、控除を増やす=税収を減らすことはしたくないんですよね。
所得税の税率45%は上げるのは難しそう
税収を増やしたければ税率を上げればいい、と思うのですが、税率は国際比較されやすく、諸外国で所得税の超過累進税率の最高税率はおおむね45%で揃っています。
これを上げるのは、ちょっと難しいでしょうね。外国の方に、税率が高い国では働きたくないな、と思われてしまうので。
なので最近は、税率をいじらず、控除を減らすか、所得制限を設けるか、特例の減税額(住宅ローン控除など)を減らしたりしているのです。
また、インフレになれば、消費税の税率を変えなくても、消費税の税収は増えることになります。
30万円未満の資産を経費にできる金額基準が据え置かれると、実質増税です。
ただ、法人の接待飲食費については5,000円を1万円に引き上げる物価高対応が行われました。このように、政治家を動かして、法律を変えることができればいいのですが。
近年の流れとしては、税率を上げない静かな増税が進んでいるといえます。
増税見込みの世界ではどのように行動したほうがいいか
増税ぎみの世界ではありますが、メリハリをつけて、従来より減税が進んでいる部分もあります。賃上げ税制とか。
このような税額控除は従来どおり、受けられるなら受ければよいです。
ただ、今期の所得を来期以降に繰り延べる、「課税の繰り延べ」効果があるものはやりすぎないほうがいいでしょう。
将来の増税を予想するなら、いま、課税されたほうが、トータルで税金は少ないことになるからです。
もちろん、将来予測に確実なことはいえませんが、ひとつの判断材料にはなります。
編集後記
街でマイルス・デイヴィスの顔と名前がプリントされたTシャツを着た方とすれ違う。こういうこと、ときどきあります。そういうの、どこで売ってるんですかね……?