社長個人が賃貸物件を持っている場合、上物だけを法人に売却して、土地を個人、建物(賃貸用)を法人(社長の会社)で持つことは、よく行われます。
なぜ、土地は個人、建物は法人で所有することが、ふつうになっているのでしょうか。
これは、こういった地主社長についている税理士が、そのほうが有利だとして、勧めているからです。
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法人が土地を持つデメリット
まずは単純に資金繰りの問題です。
中小企業は、投資しないものを決める – 税理士 木村将秀のブログ
法人は、貸借対照表の固定資産に、金額が変わらないものはなるべく持たない、というのが原則です。
固定資産が、純資産よりも小さくなるようにお金を使うのが、資金繰りを悪化させないコツです。
土地は、買い取った金額のまま固定資産に計上されるので、固定資産が減りにくくなってしまうのです。
土地は建物と違って減価償却されませんので、経費になるのは通常、売ったとき(収入が発生するとき)だけです。
であれば建物は法人が持ち、減価償却費を取っていくのがよいでしょう(しかも、社長から買い取れば、耐用年数が中古となり償却費も多めになる。ただし、定額法)。
法人の買い取り資金の問題はあります。法人が社長から借りるケースが多いです。
個人が土地を持つメリット
土地は個人、建物は法人という場合、通常、土地賃貸借契約書で、将来土地を無償で返還する約束にしておき、そのうえで「土地の無償返還に関する届出書」を、個人・法人の連名で税務署に出します。
「土地の無償返還に関する届出書を出します」と言われたら知っておきたいこと – 税理士 木村将秀のブログ
借りた土地に建物を所有している法人は借地権者となり、借地権を持ちます。
借地権者である法人が、借地権を、底地権者である社長個人に無償で返還することを届出ます。
この場合、法人は、賃貸借とするために、地代を、土地の固定資産税の2~3倍程度を支払ます。
すると、借地権料を払わない代わりに高い地代を払う「相当の地代」より少ないですが、これが相当の地代とみなされます(法人は、0円の借地権をもらう)。
社長個人としては、不動産所得となる収入を小さく抑えられます。
土地が経費にならない個人は、収入が少ない方がいいですよね。経費は固定資産税くらいしかありませんので。
ただし、社長の役員報酬が高いと、それなりに地代収入にかかる税金も高くなるので注意は必要です。
それでも法人の税率のほうが低ければ、この安い地代で法人の所得を多くしたほうが有利になります。
最終的には相続税のメリットもある
上物が、賃貸物件であるという条件付きですが、この方法だと、社長の相続税対策にもなります。
社長の所有する土地の評価額が、20%下がるのです。
これは、借地権は0円だけど、自分の会社が持っている建物とはいえ、土地に法人の建物が建っていれば、個人として土地の活用が妨げられます(例えば、すぐには土地を売れないですよね)。
そこで、「借地権の取引慣行がないと認められる地域にある貸宅地」の借地権割合20%と同じだけ、土地の評価を下げてくれているのです(実質が同じ他の形式の取引とのバランスを取る趣旨)。
ただし、社長の持つ会社の株の評価上は、この借地権20%分が資産に加算されますので、一見トントンになるように見えます。
ですが、建物が賃貸物件であれば、借地権のうち、借家人の権利分3割を差し引けますので、20%加算するところ、うち7割の14%をプラスするだけで済み、トータルで相続財産の評価額が下げられるのです。
不動産は、税金対策のかなめです。
編集後記
祝日ですが、軽めに確定申告の仕事を3件(ざっくり仕上げ、電子申告、税額の連絡)。
建国記念日は、なんか、お稲荷さんを食べる日らしいです。下の子が手伝ってくれて、おいしかったです。