決算で計上した〆後売上、来期どうするか

売上の締め日が決算日より前の場合、締め日の翌日から決算日までの売上(〆後売上)を計上しておく必要があります。20日締めなら、決算月(例えば、3月)中はまだ請求書を出していなくても、決算整理で3月21日から3月31日までの売上を計上するわけです。

ただ、翌期首(4月)になったあと、請求書の金額どおりに3月21日から4月20日までの1カ月分の売上を計上すると、〆後売上と一部ダブってしまいます。

すると、入金があってもダブった分が消し込めなくなり気になる。じゃあ簿記で勉強したとおり、翌期首に再振替仕訳 (借)売上 (貸)売掛金 でダブり分を消せばすっきりするのですが、今度はデメリットが。

次の決算月を迎えたとき、売上が〆後売上未計上分少なくなっています。このことを忘れていると、今期の売上・利益を過少に見込んでしまうミスを誘発するのです。なので、あえて期首に再振替仕訳を入れない方をおすすめしています。

新聞販売店・新聞社の会計

すばらしい論考を発見してしまいました。まだちゃんと読んでいないのですが、ぜったいいいものです。軽減税率対応もしています。

「新聞販売店の会計と税務」寺田誠一・著

法人成りの仕訳についても書かれています。そう、新聞社は、必ず個人と契約することになっています。目的は、法人と個人という圧倒的な力の差で、新聞社に有利な取引をすることなんですが(これ、なんかの裁判で新聞社の人が実際にそう証言していたのを読みましたね…)。

一方、新聞社はどんな会計処理をしているのか。これは、次の本に書いてあります。

『新聞社の経理規程』日本新聞協会経理規程研究会・編

業界団体が、経理方法をまとめているのって、けっこうありますよね。新聞協会に申し込めば買えたはずです。そうでなくても、地元の大きい図書館には蔵書してあったりします。新聞用紙の会計処理(仕入諸掛は取得原価に含める等)なんか、棚卸資産会計マニアにはたまらない一品です。

横領の会計処理~同時両建説をわかりやすく

その損害がその法人の役員又は使用人による横領による損失であるような場合には、通常、損害賠償請求権はその時において権利が「確定」したものということができるのであるから、被害発生事業年度において、当該損失の額を損金の額に算入するとともに、損害賠償請求権を益金の額に算入する。

不法行為に係る損害賠償金等の帰属の時期

これが、内部犯行による横領の場合に処理される同時両建説という税務会計処理ですが、長いし、難しいですね。わかりやすく言いますと、

  • 横領された事業年度に、損失だけを計上してはいけない
  • 横領されたお金が戻ってきたつど、収益を計上してはいけない
  • この文章のとおり、①(借)雑損失 (貸)預金…不法行為による損失、②(借)未収金 (貸)雑収入…損害賠償請求権の取得 と2仕訳を切らなくてはいけないのではなくて、(借)未収金 (貸)預金 として、結果、利益が0になる仕訳でよい

ということです。

負債はどうすればなくなるか~預り保証金の譲渡

負債の部にある買掛金、未払金、借入金、預り金。こういった科目は、どうすればなくせるでしょうか? 改めて考えてみると……お金を払ってなくしますね、基本的には。

不動産賃貸業で賃借人から受け入れた保証金も同じです。なくしたければ、返すしかない。では、すでに貸している物件を売却(オーナーチェンジ)する場合はどうなくすか。

賃借人に返してもいいですけど、また新しいオーナーに預けなおしてもらうんじゃ二度手間ですね。そこで、旧オーナーから、新オーナーに直接お金を渡せば、手間を省いてなくすことができます。(保証金の清算あり)

さらに手間を省こうと思ったら、土地建物は新オーナーに売ってお金をもらうわけですから、このお金を、預り保証金分、少なくもらえばいい。(保証金の清算なし)

で、清算なしの場合の注意点。預り保証金分の金額を、もらったお金に合算して、土地建物の譲渡代金を算出するのを忘れないでください。

特別利子補給制度の会計処理

特別利子補給制度…の会計処理については、交付を受けた利子補給金の額を、一旦前受金等として負債の部に計上し、支払利子の費用処理に合わせて、その支払利子相当額を前受金等から利子補給金収入等の収益の部に振り替えることとなります。税務上の取扱いも同様です。

問7-2 新型コロナウイルス感染症特別利子補給制度に係る利子補給金の収益計上時期

コロナ融資に関する特別利子補給制度ですが、2通りありますね。初めから利率が0.0%となっているやつと、利率が設定されていて、利子も引き落とされるけれども、利子補給も別途もらえるやつ。

国税庁のQ&Aでは、公正妥当な会計処理をそのまま税務も受け入れる、いわゆる法22条4項の取扱いとなっています。

利子補給を別途もらった場合には、返済予定表の、利息の金額の今期分を合計して支払利息を計上し、それと同額の雑収入を計上するように、収入額を前受金と雑収入に分けることになります。

外貨建会計

為替差益か為替差損か

為替差損益。トクするのかソンするのか、直感的に分かっていると処理が速くなります。

覚え方はかんたんです。「輸出企業は、円安で儲かる」。ニュースとかでよく聞く言葉ですね。これだけ覚えれば十分です。輸出したら資産が手に入る。その後、円安なら為替差益。あとは覚える必要はありません。この裏返しで簡単に答えがでます。

資産負債
円高差損差益
円安差益差損
為替差損益判定

金額はいくらか

受入CR払出HR損益
200120200110 2,000
300100300110△3,000
為替差損益の額の計算

為替差損益の金額の出し方が分からなくなったら、棚卸資産の譲渡損益の計算に置き換えて考えます。数量×単価です。

外貨建会計では、数量が外貨の金額で、単価が為替レートです。受け払いのときは、数量×単価の差額で出すのが公式みたいになっています。これは、棚卸資産会計同様、受け払い数量が常に同数だからですね。

『原則主義の会計力』

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なんか、先日も似たタイトルの本を紹介したような…。『原点回帰の会計学』ですね。

こちらは、『原則主義の会計力』です。2011年の本ですが、もう収益認識基準のことも載ってるし、内容的には古びていないと思います。

「 IFRS 対応、こわくないよ」という本です。そもそも、お膝元の EU だって、IFRS に杓子定規に対応していないといいます。日本より経済が発達していない国だって IFRS に対応しています。それは、適度に自国用に曲げて付き合っているからだそうです。

日本基準のような数値基準のある細則主義では、ルールをかいくぐったり裏をかいたりして不正を行う会社が出てくるけれど、「経済的実体を正しく描写しましょう」というルールなので、不正を行いにくいとあります。

上場企業でも、実は現金がありませんでした!みたいな会社がありましたが、実際 IFRS 採用企業は不正が少ないのか、気になるところですね。

養老保険の会計処理

法人の養老保険(ハーフタックスプラン)の会計処理は、始めのうちはかんたんです。払った金額の半分だけ保険積立金にしておけばいいんですから。

でも、従業員が退職しはじめると、とたんに複雑になります。退職により解約して、お金が戻ってきたら、一部が保険積立金の取り崩し、入金額との差額が雑損失・雑収入になります。

払った金額は、従業員ごとに異なる保険料の合計額となっていますので、保険設計書に立ち戻って個々人の保険料がいくらかを確認します。そして解約した個人について、解約までに支払った金額を合計して、それを 1/2 したのが (貸)保険積立金 です。

期末までに複数人解約して、複数回返戻金が入ってきたら、まとめて仕訳を作りましょう。

  • (借)普通預金 300 (貸)保険積立金 400
  • (借)普通預金 200 (貸)保険積立金 300
  • (借)普通預金 100 (貸)保険積立金 200
  • (借)雑損失  300

Excel 家計簿(こづかい帳)

年月日科目摘要入金出金残高
5月1日繰越500500
5月2日食費100400
6月1日外食喫茶300100
6月2日引出600700
金銭出納帳の例

私の付けている家計簿を紹介します。上のような Excel シートに入力を 1 年分行います。残高は、現金過不足を算出するため。預金・交通系IC・カード払いについては残高を動かしません。繰越・引出等は科目を空欄で打ちます。

これをピボットテーブルで月別推移表に変換して、費用一覧を作成し、その上に収入金額を入れて、貯金額を算出。月別推移表の作り方は:Excelのピボットテーブルの日付データを月ごとにまとめて集計する方法

合計 / 出金列ラベル    
行ラベル5月6月
食費100
外食300
推移表ピボットテーブル

ピボットテーブルの金額セルをクリックすると元帳が出ます。科目に医療費を設定すれば、年末と同時に医療費控除の集計が完了することになります。らくちんです。

『原点回帰の会計学』

読んでみました。IFRS は、何が何でも公正価値で測定するというわけではないので、ひたすら公正価値に否定的な論調には疑問を感じないでもないです。

同じような文言(「800年」で検索したら何個抽出されるのだろう)、前にも聞いた話が何度も繰り返されます。編集者は「繰り返しが多いですよ」と指摘しなかったのだろうか。1/4 に要約(圧縮)できそうな本です。

などとネガティブなことを書いてしまいましたが、いいところもあります! 損益計算書は機密情報なので、貸借対照表と比べて公開が遅れた(今も、売上値引高を公表しない会社がほとんどですもんね)といった歴史的な話は面白いです。

会計や経理の不正はなくならないけれど、そういうことをする人は、会計の原点、簿記の基本が分かっていないのだなと感じました。「簿記・会計は、事実に合わせるものだ」ということ。これが分かっていないから、数字を作ってしまうんでしょうね…。