インボイスの四捨五入にはRound関数でなくInt関数を使う

消費税額を端数処理して整数にするために

インボイス制度では、売上請求書上の消費税額の計算は、合計額に対して1回だけ行います。

端数処理を1回だけ行うようにして、税込金額が小さくなりすぎないようにする節税防止制度です。代金はともかく、納税額は税込金額から算出しますので。

さて、この端数処理は、Excelでどうしていますか?

「端数処理といえばRound関数」と言われがちですが、端数処理して整数にするために、私はRound関数を一切使いません。

Int関数を使います。

Int関数で、税率10%の消費税額の小数第一位を四捨五入するには、次のような算式を組みます。

=Int([税込合計額]/1.1*0.1+0.5)

なお、軽減税率の場合には、 =Int([税込合計額]/1.08*0.08+0.5) とします。

ただし、合計額が正の値である場合に限ります。じゃあ、マイナス金額の四捨五入はどうすればいいのか?

Excelのセルにマイナス値を入力しないことをお勧めします。左のセルに、マイナスとわかるように「△」とでも打っておけばいいでしょう。

ちなみに、消費税算出上の端数処理は、切捨てでもいいので、その場合は、次のようにします。

=Int([税込合計額]/1.1*0.1)

なお、軽減税率の場合には、 =Int([税込合計額]/1.08*0.08) とします。

税抜合計額から消費税額を出したい場合は、 /1.1 や /1.08 を省けばよいです。

会計ソフトの自動税抜処理で出る税額の端数処理方法はご存じですか?

仕訳を入力するとき、税込金額で打っても自動で消費税額が出ると思いますが、その税額の端数処理はどうなっているかご存じですか?

上の四捨五入の算式 =Int([税込合計額]/1.1*0.1+0.5) の消費税額と、会計ソフトの消費税額が一致していたら、会計ソフトは、「小数第一位で四捨五入」をしていることになります。

「税込499,999円」などで試してみると、分かりやすいと思います。

売上税額の積上計算をしたい方は、Excelの売上請求書の税額と、会計ソフトの税額とを一致させるために、一度、会計ソフトの端数処理の挙動を確かめておくことをお勧めします。

とはいえ、通常は税額は一致していないくてもいいです。消費税の納税額は税込金額から算出しますので、そこだけ合っていればOKです。

経費の摘要、どこまで書けばいいのか

経費を入力するにあたって、摘要欄には何をどのくらい書く必要があるのでしょうか。

消費税の税率の違いが分かる程度に

一つの考え方として、「消費税の税率基準」があります。

消費税法上の経費には、大きく分けて次の3つがあります。この区別ができる程度に書けばいいのです。

  • 10%の税率がかかるもの
  • 8%の軽減税率がかかるもの
  • 消費税がかからないもの
  • インボイスがいらないもの

レシートなどに印字されている商品名そのものではなく、一般的な呼び名でOKです。

いろんな種類のものをまとめて買ったら、税率の違いさえなければ、「○○ほか」でくくります。

取引先入力欄がなければ、取引先も摘要に入れます。

「㈱○○ △月分 □□□」という感じで、□□□の取引内容は下表のように入力します。

税率等摘要の記載例
10%事務用品、酒
軽減8%食料品、新聞定期購読
なし地代、社宅家賃、商品券、印紙、行政手数料、海外出張、国際電話、EMS、放置違反金、ゴルフ場利用税
インボイス不要電車代、バス代、入場券、古物、質物、宅建、再生資源、自販機(○○市)、ATM(〇〇支店)、郵便切手、出張旅費等、通勤手当

ちなみに、消費税を納税しない方・2割特例・簡易課税の方は、「インボイス不要」の行は気にせず、自分でわかるように書けばいいです。

10万円以上のモノは内容と個数を詳しく

一方、10万円以上の備品や車両・修理代・工事費などは、請求書や見積書のとおり、詳しく書いておきましょう。

高額な支払いは、払った金額がそのまま経費にならない可能性があるからです。

型番があるものは、型番も。あとから請求書を見直す必要がない程度に固有名詞を書いておきます。

型番でネット検索すれば、何を買ったかわかるので便利です。資産に計上するときの勘定科目、耐用年数を選ぶときの他参考になるようにします。

同じものを複数買って10万円以上になった場合は、個数も買いておきます。備品1個当たり10万円未満になれば、経費になるからです。

経理はメリハリが大事です。少額のものはどんどん定型文で打って、10万円以上の物の購入はしっかり元資料から転記しましょう。

「引当金」の役割は「これが利益と思ってもらっては困る」と伝えること

引当金を使わない理由

簿記や会計・財務諸表論を勉強すると、評価損・減損損失・〇〇引当金といった、費用を積み増しするものをたくさん習いますが、実際には使っていないという人も多いと思います。

なぜ、習ったのに使わないか。

それは、その損益計算書を、税務署以外の他人に見せていないからだと思います。

会計は、コミュニケーションのための道具です。なのに、その決算書を他人への「伝達」に使わないなら、「引当金」などの多様なワードを使って説得しようとする必要がありません。

引当金を使うべき理由

引当金には、本来、どんな説得力があるのでしょうか。

引当金を計上しなければ、その分利益は大きくなります。

しかし、経営者としては、「この利益が、本当にそのまま利益と他人に思われては困る」というときがあるのです。

ここで他人とは、主に、他の役員や同僚・部下といった「その利益の中からお給料をもらう人たち」です。

「こういった人たちに決算書を見せない」と決めているならいいのですが、見せて決算書の数字で説得すべきときもあると思います。

その場合、決算時に支出もせず仕入れもしていないものについて、通常は費用を計上できません。

「利益を取っておく必要がある」と伝える効果

でも、社長の頭の中で、「この利益は将来のために取っておきたいんだよな……いまここで、増益だからって賃上げ要求をのんだら、将来のあの支払ができなくなる。なんて従業員に伝えたらいいんだろう……」との考えが渦巻いていたとします。

そこで登場するのが「引当金」なのです。今は支出もせず仕入れもしていない、将来の費用を先取りして、決算書の見た目の利益を減らすことができます。

「ほら、利益出てないでしょ? 何でかというと、〇年後にこれを払わなきゃいけないの。そのための利益を、この繰入額で取っておいてるの。だから賃上げはこのくらいで我慢してね」

こういうメッセージは、引当金でしか伝えることができないものです。

損益計算書は英語で、Profit and Loss Statement。ステートメント、「意見」なのです。説得力のある決算書をつくるために、引当金の活用を検討してみてはと思います。

決算の基本は、B/S残高を外部資料と一致させること…の例外が一部解約・入替えをしたリース債務

リース債務がリース支払予定表と合わなくなる理由

決算は、貸借対照表(B/S)の資産・負債の残高を、外部の資料の金額と一致させることで行います。

たとえば、「預金や借入金の残高を、銀行が発行する残高証明書に一致させる」ということですね。

さて、リース債務(長期未払金)です。

決算書のリース債務(リース会社に支払うべき残額)は、リース会社が発行する支払予定表の、決算月の残金と合わせるのが原則です。通常は、合います。

でも、これが合わなくなることがあります。

それは、複数のリース物件をまとめてリース開始した際に、そのうちの一部を解約したり、入れ替えたりした場合です。

リースの支払予定表には、当初のリース残債の支払予定と、その残りしか記載されていません。

その後の一部解約・入替え・追加のリースは、想定外です。当初の支払予定表は、そのままでは、B/S残高との突合せには、もう使えません。

リースの一部解約等をしたら、Excelで残債管理をしよう

リースの支払予定表は、同時にリースを開始した複数資産がまとめられた金額になっています。

しかし、あらゆる残高には、内訳があります。まとめられる前の、リース資産別の金額を、当初のリース支払予定表から見つけ出しましょう。

リース資産ごとの月払い額(税込)が、どこかに出ていませんか? 見つけたら、それが何年リースか確認しましょう。5年リースなら、5×12=60回払いです。

月払い額×60 が、その資産の支払総額です。Excelで、その支払総額スタートで、月払いごとに残高が減っていく表を作ります。

その表を、まだ解約していない資産ごとに、支払月を揃えて作り、月額払いの合計額と、残高の合計額を作ります。

複合機残高PC残高ソフト残高月額計残高計
110040140
2109043614126
310804325014162
41070428104024138
51060424103024114

Excel表の、その月のリース会社による引き落とし額(月額計=理論値)が、その月の通帳(預金の元帳)の引き落とし額(実際額)と一致していることを確認します。

これが各月で合っていれば、OKです。あなたが集計したリース債務の残高計も、正しいということになります。

合わない場合、タイミングしだいで初月のみ2回引き落とされたりすることもあるので、リースの支払予定表をよーく眺めてみましょう。

低い確率でも生き延びるためには、元手が必要

大企業かどうかは、資本金の額で区別します。大きければ大企業です。

実際には、資本金が数百万円の有限会社でも、数百億の資産を持つ実質大企業もありますし、資本金の額で大小を分ける意味って? と当初は思っていました。

しかし、当初投資額である資本金の額の大小に意味があることは、『BET』(押川雲太朗)で学びました。

ビジネスの純粋形である「ギャンブル」(「ただ一方的に奪うことが許される場所」)では、ポーカー対決で手持ちのチップが80万ドルと40万ドルでは勝負になりません。

成功の確率は低いので、何度も失敗して、そのうち1回、2回が成功することでギャンブラーは生き残ります。

手持ちのチップが多ければ、失敗しながらチャンスを待つことが可能ですが、手持ちのチップが少ない中小企業では、何度も失敗したら、チャンスが来る前にパンクしてしまいます。

タネ銭さえ残っていれば復活できるチャンスがあると、『BET』は教えています。

資本金の大きな企業は、何度も失敗できるので、結果、実質的にも大企業になれる。そして、さらに何度も失敗できる。多少失敗してもつぶれない。そういう上場企業のニュースをよく見かけます。

ブラックジャックのビデオゲームをやると、勝つ確率は低くても、手持ちのチップが十分な量になると、減らなくなり、元手が多いと強いのを実感できます。

成功するためには、何度も失敗するしかなく、何度も失敗できるように、タネ銭を多めに持っていくか、失敗しても減るお金を最小にする「1ドル賭け」をするかといった工夫が必要と考えています。

「消費税は利益の中から払ってるんですか?」という質問への回答

税抜経理方式が前提の話ですが。

まず、損益計算書のボトムに当期純利益が100万とか出てるじゃないですか。

で、貸借対照表を見ると、未払消費税等が40万とか出てる。

「えっ。法人税を払った後のもうけが100万で、ここから40万の消費税を払ったら、残るお金は60万なの? 税金重すぎない?」

と思うのがふつうの感覚であると思います。

でも、それは違うんです。

利益より多くもらった収入から消費税を払っているので、利益からは払っていません

税抜経理方式とは、損益計算書のトップの売上高の数字から、お客様からもらった消費税を(国に納めるものだからという理由で)あらかじめ抜いてある、というものです。

税抜きの売上高とは、収入額ではありません。

収入額から消費税分を減らした「売上高」をもとに当期純利益を計算していますので、利益も収入より少なめの数字になっています。

消費税は、この「売上高よりも多くもらった収入」の中から払っています。だから、現金売上しかなければ、消費税を払っても、稼いだキャッシュは100万のまま、変わりません。

利益に計上されていないという、「売上高より多くもらった収入」はどこに記載されているか? 貸借対照表の、「現金及び預金」に残っています。消費税は、利益からではなく、この、売上より多くもらった金額から支払っているのです。

会計業界に入って、アプリまわりで驚いたこと

忘れないうちに、書いておきます。

税理士業務には、いろいろな処理があるのですが、その処理をするソフトが、処理ごとに違うんですね。

何個もソフトを立ち上げないと、仕事が進まない。これが意味不明でした。

で、同じソフトハウスで、いくつもソフトがあるのですが、その操作性が、ソフトごとに違うんですね。

もっと言うと、同じソフトでも、入力フォームごとに違うんです。

特に、プリンタ出力回りのデフォルトがばらばらで、PDF出力のボタンがあったりなかったりする。

あと、CSV入出力ができたりできなかったりする。

あと、元号(和暦、平成・令和)での入力を強制されるのに、内部処理は当然西暦であること。そのくせ、西暦で入力・出力ができない。

あと、半角カタカナと全角カタカナを同一視できない。MSですらできるのに。(これ、できる税務会計ソフトないらしいですよ。だっさ)

色々調べると、全部が全部そうでないことは分かるのですが。

消費税を払った後の手残りはいくら? 消費税とキャッシュフロー

決算書クイズ 利益はともかく、お金はいくら増えた?

今期の損益計算書を見ると、当期純利益500万円 とある。

今期の貸借対照表を見ると、未払消費税等100万円 とある。

このとき、来期に消費税を納税したあとの手残りは、おおよそいくらになるでしょうか?(他の要素はなく、前期末の未払消費税等は0円と考える)

当期純利益500万円から、消費税100万円を支払った、およそ400万円と考えるのか。

それとも、当期純利益 およそ500万円と考えるのか。

ちょっと考えてみてください。ヒントは無し、です。

答え 利益とキャッシュフローとの関係から考えると…

「利益は収支計算とは違うから、会計は難しい」「決算書からは現金の手残りが計算できない」。そう思われてはいませんか? 

でも実は、利益と収支の間には、つながりがあります。損益計算書は、現金の収支計算を一部修正して、利益にしています。逆に言うと、利益を一部修正することで、現金収支に戻るのです。

答えは、消費税を納税したあとでも、当期純利益 およそ500万円分が手残り=キャッシュの増加額となっています。消費税は、当期純利益から支払うのではありません。

キャッシュフローという観点からいうと、貸借対照表の「負債の部」が増えているのは、お金が増えたのと同じ意味があります。期末時点で払わなくて済んだわけですから。

なので、利益500万円を収支に変換すると、未払消費税等が100万円増えたので、現金収支は500万+100万=600万円です。

この現金収支+600万円から、来期に未払消費税等100万円を払うので、600万-100万=500万円、消費税納税後のキャッシュが増えていることになるのです。

なんか、キツネにつままれたような話ですが。

不要資産を固定資産台帳の簿価で売ってしまったらどうなるか

固定資産台帳を眺めていたら、不要な資産があったので、欲しそうな知り合いに、「別にもうけもいらないんで」と思って台帳の帳簿価額で売った。

これが問題にならないケースと、なるケースがあります。

問題にならないケースは、売った人が消費税の免税事業者だったり、税込経理方式だったりした場合です。損得はないです。

若干問題になるケースは、売った人が消費税の課税事業者(税抜経理方式)だった場合です。簿価で売ったから損得がないと思ったのに、実際には損をしてしまっています。

固定資産台帳の簿価(1,000円)は、税抜金額です。税抜金額で売っても、収益の額はそこからさらに税抜した額(909円)になるからです。↓の例では、本当は1,100円で売って初めて損得なしになります。

借)現金      1,000 貸)固定資産売却益 909
              貸)仮受消費税等   91
借)固定資産売却益 1,000 貸)固定資産   1,000
借)固定資産売却損   91 貸)固定資産売却益  91

受験簿記と会計ソフト簿記の違い しーくり、くりしー編

仕入 ××× 繰越商品 ××× … 期首商品を売上原価に加える
繰越商品 ××× 仕入 ××× … 期末商品を売上原価から除く

簿記3級を受験した方なら「しーくり、くりしー」を習ったと思いますけど、経理の仕事に就いた後、このとおりには仕訳を入力しないことが多いのでは。ある会計ソフトでは、次のように入れます。

期首棚卸高 ××× 商品 ×××
商品 ××× 期末棚卸高 ×××

見た目が違うと、何を言っているのか分からない。この分からなさは、受験簿記は仕訳の科目と損益計算書(P/L)の科目とを分けて考えているのに、会計ソフトでは仕訳の科目と損益計算書の科目とを一致させていることが原因です。

一つ目の仕訳で増やしている期首棚卸高は、前期のP/Lの「期末棚卸高」と同額。この仕訳は、前期のP/Lの「期末棚卸高」と、今期のP/Lの「期首棚卸高」を一致させ、2期のP/Lの期末と期首とをつなげるという意味があります。

したがって、この場合の期首棚卸高は、期中、絶対に修正してはいけません。前期末のP/Lの期末棚卸高とズレてしまうからです。